異文化に対する不適応の問題を「危機」と表現することには議論の余地があるかもしれません。しかし、交換留学などの中長期の海外渡航において、日本とは異なる文化や習慣、生活様式などとの接触による不安やストレスなどは、程度の差こそあれ誰にでも起こりうるものです。

 したがって、「異文化に適応できなかったらどうしよう」と必要以上に心配することよりも、「それは誰にでも起こること」であり、「それも貴重な異文化体験である」と楽観的に構えて、心の準備をしておくことが大切です。

 また、異文化不適応が生じる原因や背景を予め把握したり、理解しておくことも不適応の程度を軽減したり、トラブルの回避に繋がるかもしれません。そうした原因や理由には、次のようなことが考えられます。

  ・日本の生活環境や生活様式との違い(例:「水回り」の風呂・洗面所・トイレ)

     →「お湯」が出るか出ないか。

     →トイレットペーパーを使うか使わないか、など。

  ・気候・風土の違い(例:想定外の暑さ、寒さ、湿気、乾燥など)

  ・習慣・風習の違い(例:握手やハグ、チップ、宗教的な儀礼・タブーなど)

  ・食文化・食習慣の違い(例:手で食べる)の違い

  ・治安状況や衛生観念の違い

  ・時間や距離の感覚の違い

  ・社会のルールやシステムの違い

  ・コミュニケーションの違い(例:相手側の「自己主張の強さ」、「はい」と「いいえ」がはっきりしている、など)

 こうした「異文化」に適応するには、次のような前向きな受けとめ方や発想の転換が役に立つことが少なくありません。

  ・「郷に入れば郷に従う(When in Rome, do as the Romans do.)」

  ・「ポジティブ・シンキング(positive thinking)」

    → 日本や自分との「相違点」ではなく「共通点」を探してみる。

    →「日本とは違うこと」の意味や価値を考えてみる。

    →「不便」や「苦労」も「貴重な経験だ」という発想の