①海外の医療事情
ⅰ)日本と海外(特に途上国)では医療の水準や制度などが大きく異なる場合が多いので、事前に渡航先で医療事情(英語や日本語が通じる病院等)を調べておく。
ⅱ)途上国の都市部以外の地域では、設備の整った病院が存在しない場合が多い。
ⅲ)熱帯や亜熱帯地域の国へ渡航する場合には、感染症の流行に留意する。
ⅳ)海外旅行保険に未加入の場合は、高額な医療費を請求される場合がある(海外旅行保険には必ず加入してください)。
ⅴ)海外の市販薬は日本とは成分や分量が異なり、日本人の体質に合わなかったり、強い副作用が生じたりする場合もある(自分の体質にあった常備薬を準備して持参すること)。
②海外で注意すべき感染症
ⅰ)旅行者下痢症
特に、熱帯や亜熱帯地域の途上国へ渡航する旅行者がもっとも罹りやすい病気が、さまざまな病原体の経口感染による「下痢」である。37度以上の発熱や1日5回以上の下痢を認めた場合は、医療機関を受診することが望ましい。
ⅱ)蚊の媒介による感染症
特に、熱帯や亜熱帯地域の途上国では、デング熱やマラリアなど、蚊の媒介による感染症が発生している。虫除け対策をしっかりとすること。
ⅲ)新型コロナウイルス感染症
新型コロナウイルス感染症は、日本では2023年5月8日に5類感染症に移行した。しかし、パンデミック(世界的大流行)を繰り返しているので、渡航時や渡航先の最新情報を必ず確認すること。
ⅳ)その他の感染症
特に、熱帯や亜熱帯地域の途上国では、重篤な感染症が少なくない。渡航前に感染症の最新情報を確認しておくこと。
<参考ウェブサイト>
外務省「海外安全ホームページ:感染症危険情報」
厚生労働省「FORTH 海外で健康に過ごすために:感染症情報」
厚生労働省「FORTH 海外で健康に過ごすために:新型コロナウイルス感染症」
③予防と健康管理
ⅰ)渡航前
・体調管理をしておく。
→体調が悪いと抵抗力が弱くなる。
→アルバイトや体育会の活動などの日程が過度にならないように。
・虫歯は直しておく。
・必要な予防接種を受けておく。(予防接種については次項を参照)
・自分の体質にあった常備薬(総合感冒剤、解熱鎮痛剤、胃腸薬など)を準備しておく。
・慢性疾患で治療を受けている場合は、早めに保健管理センターへ相談すること。
ⅱ)渡航中(特に、熱帯・亜熱帯の国々で)
<食べ物と水に注意>
・食事前やトイレ後は手を洗う。
・飲料水はミネラルウォーターを飲む。生水を飲む場合は煮沸してから。
→地元の人は蛇口の水や井戸水を飲んでいても“水が合わない”こともある。
・屋台や大衆食堂で出される「氷」や「生野菜・フルーツ」に注意する。
・明らかに不衛生な店では飲食しない。
・暴飲暴食は避ける→香辛料や油分も食べ過ぎると下痢の原因になる。
<蚊や動物に注意>
・感染症を媒介する「蚊」に刺されないようにする。
→肌を露出させず、虫除けスプレーや蚊取り線香を活用する。
・野生動物の他にも都市部の犬や猫などには、むやみに近づいたり、触ったりしない。
・河川や湖沼などの淡水には寄生虫がいる場合があるので、水浴びや水泳には注意。
・毒ヘビ、毒クモ、サソリなどにも注意する。
<その他>
・疲れたときは休息を取る。→当初の予定や旅程を強行せず休息を取る。
・過度の日焼けに注意する。→日焼けは体力を低下させる。
ⅲ)渡航後
・帰国便の中で体調が悪くなった場合は、空港の検疫所に申し出る。
・帰国後に発熱、下痢、嘔吐などがあった場合には、速やかに病院へ行き、海外に渡航していた旨を伝えて診断を仰ぐ。
④予防接種について
ⅰ)法定の定期予防接種を自分が接種しているかどうか、母子手帳等で確認する。
<定期予防接種> 三種混合(DPT:ジフテリア・百日咳・破傷風)、ポリオ、BCG(結核)、MR(麻疹・風疹)、日本脳炎、など。
ⅱ)欧米の大学等に留学する際には、大学側から予防接種の証明書の提示を求められる場合があるので、事前に確認すること。遅くとも渡航する3カ月前までに保健管理センターへ相談することが望ましい。
保健管理センター TEL:028-649-5123 相談メール:sodan@cc.utsunomiya-u.ac.jp
ⅲ)海外渡航時の予防接種は任意であるが、渡航先、渡航内容、渡航期間に応じて、必要な予防接種を計画的に受けておくことが望ましい。
<例>肝炎(A型・B型)、狂犬病、破傷風、日本脳炎、腸チフス、黄熱病など
※破傷風:11~13歳の時に二種混合(DT:ジフテリア・破傷風)ワクチンを接種していれば、20歳前半までは免疫がある。その後は追加接で10年有効。
※黄熱病:熱帯地域のアフリカや南米に渡航する場合、入国時に接種証明証(イエローカード)の提示を求められることがある。ワクチンを接種できる医療機関は東京検疫所などだけに限定されているので要注意。
※狂犬病:予防はできるが治療はできない。発症すると致死率ほぼ100%。渡航前に半年かけて3回接種。2回だけでも接種しておくことを推奨。
ⅳ)致死率のきわめて高い狂犬病のワクチンは、国内での事前接種が困難な状況にあるため、現地での「暴露後接種」と帰国後の追加接種の対応をとることが必要。狂犬病の発生地域に渡航する場合は、事前に医師と相談すること。